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言葉と絵が交わる世界

2026.03/16
2026.03/16

美術家 亀 川 果 野 さん

言葉や文字を描きながら、独自の世界を紡ぐ美術家・亀川果野さん。日本画で用いられる伝統的な素材や石・土といった自然素材を用いながら、読むものと見るもの、そのあいだに生まれる気配を巧みに重ね合わせています。文字自体をモチーフとする独特の世界観は、見る人の想像力を刺激します。そういった作品を生み出す亀川さんが、どのような思いで作品を制作しているのか、言葉と絵の関係、素材を選ぶときの思いや魅力、そしてこれから挑戦したいことについてお聞きしました。

言葉(文字)と絵画

――  言葉(文字)を絵画のモチーフに選ぶようになったのはどのようなきっかけからでしたか?

日本画を学ぶ中で、私は「作品」と「タイトルやコンセプトとして付けられる言葉」との関係に、違和感を持っていました。自分が描いた絵とそれを説明する言葉とが、うまく重なっていないように感じることがありました。ときに言葉は、作品そのものの内容以上に意味を決めてしまうことがあります。この感覚が、言葉や文字そのものに関心を持つきっかけでした。

私たちは普段、ほとんどすべての物事に言葉や文字を当てはめて考えています。ただし、同じ対象でも呼び方が変わることがあり、言葉は決してその物自体ではありません。そのため、言葉は使用する人や環境によって変わる、不安定な存在だと言えます。

文字もまた、言葉と必ずしも固定された関係にあるわけではありません。文字の形は、時代や場所、見る人の経験によって印象が変わります。漢字やひらがなの形や読み方が変化してきたことや、字体の違いによって受ける印象が異なることは、その身近な例です。 こうした言葉・文字・物のあいだのずれや揺らぎに注目し、私は文字を絵画のモチーフとして描くようになりました。言葉と物がどのように結びつき、また組み替え流ことができるのか、絵画を通して考えています。

―― 言葉(文字)描く行為を通して、言葉とイメージの関係にどのような変化や発見がありましたか?

まず、絵画の中に文字を取り入れる上で、ある特定の言葉を意識的に入れるということはしていません。あくまで絵画を描いているという前提で、形に注目して文字を選んでいます。しかし完成した絵を観ると、無意識のうちに選定されて重なった文字が、偶然に言葉として、音として頭の中に入ってくることがあります。文字を「読む」という言葉としての側面と「見る」という純粋に形としての側面との境界が、見る人の知識や意識のありようで揺らぐ面白さがあります。

またそれと同様に描く側も、「書く」ことと「描く」ことの境界が自分自身の知識や意識のありようであるように感じています。そのような境界のありようは制作する中での発見ですし、また書道との関連性についても考えていくと面白いかなと思います。

―― 作品を通して、鑑賞者にはどのような体験をしてほしいと思われますか?

2の回答と重なりますが、鑑賞の中で「読む」と「見る」、「書く」と「描く」の境界について、身近な営みだからこそ改めて思いを巡らせてみると、文字を「読む」とき、「書く」とき…日常の中でほんの少しその行為や意味について感じたり考えたりする瞬間が生まれるかもしれません。

素材と表現

―― ワークショップでは、地元にまつわる素材を絵具にされています。 日本画の伝統的な素材や石・土など、自然素材の魅力を教えてください。

日本画の魅力の一つとして特に岩絵具の素材感が挙げられます。顔料が同じでも粒子の細かいものから粗いものまで、色合いや質感がかなり違ってきます。一般的に絵具と言えばチューブに入ってニュルっと出てくる絵具を想像されると思いますが、日本画で使用される岩絵具は砂のような質感で、糊の役目をする膠と混ぜても乾くと立体感がありキラキラと光を反射したりもします。

絵を描いていると「画面に色を塗っている」けれど「物質をのせている」感覚があり、また砂の上を歩いたり触ったりする心地よさがあります。なかなか言葉で言い尽くせませんが、視覚的、触覚的な素材感の魅力があるように感じます。

――広げてみたい表現や気になっている素材など今後の創作活動のビジョンをお聞かせください。

現在、文字というモチーフにひらがなを使っていますが、他の言語圏の文字を使用してみたいと考えています。

また書やデザインの分野での文字表現にも興味があるので、もっと積極的に知って自分の表現に取り込んでいけたら面白くなりそうだなとも思います。

―― 最後にお聞きします。
あなたにとってアートとは?

あったら少し面白かったり、ワクワクしたり、何かを少し変えられるかもしれないような、きっかけのようなものです。

亀川果野さんのこれまでとこれから

プロフィール
熊本県出身、広島市在住。広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程(日本画研究室)修了。 言葉と絵画の関係性を考察し、絵画内にドローイング的に文字を描き入れることで生まれる視覚的作用を活かした作品を制作している。 日本画の伝統的な材料やテクスチャーを用い、感触や言葉を切り口に日常につながる表現を目指すなど、新たな日本画の領域に挑戦中。 個展やアートプロジェクトに継続的に参加し、その地で採取した土を素材にした作品やワークショップを行うなど、広島を中心に東京など全国で活動の幅を広げている。
主な活動歴
【個展】
2022年:「Letter for images」@THE POOL(広島)
2022年:「文字についての試行」@広島芸術センター(広島)
【グループ展】
2023年:「Annual vol.1 – Imaging –」参加
2025年:「Emanating Traces」@MAKI Gallery(東京・天王洲)参加
【受賞歴】
学部卒業時の優秀作品賞
2023年:WATOWA ART AWARD 準グランプリおよび各審査員賞
2024年:広島文化新人賞(美術-日本画部門)

亀川さん 今後の活動紹介

日付イベント名HP
2026年3月3日~3月14日個展亀川果野|風景を分かる