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【ひろしまブンカノート #4】劇団グンジョーブタイ 主宰・深海哲哉さん

2026.09/28
2026.09/28

「旅行者」公演中の様子 撮影:石井清一郎、提供:グンジョーブタイ


広島県各地の文化について、取材を通して記録していく「ひろしまブンカノート」。
第4回目は、2013年から広島で活動を続けている劇団「グンジョーブタイ」を紹介します。今回は、「凪の演劇祭2026」で公演された「旅行者」(グンジョーブタイ第12回本公演、作:田辺剛(下鴨車窓)、演出:深海哲哉)の鑑賞レポートも添えて、公演の演出のことから演劇祭の印象などを劇団の主宰・深海哲哉さんに伺いました。
(取材・文/藤田えりか)

「旅行者」を見て、鑑賞レポート

ある時代のある国。電車が1本だけ走るような乾いた土地の村に、住んでいた街を追放された三姉妹が叔父を尋ねて辿り着いたところから物語は始まります。しかし、叔父がいると聞いていた家には叔父ではない夫婦が住み、さらに別の「妹」たちが後から現れます。さらに、彼女たちの故郷に行くために必要な切符は3枚しかないこともわかります。その切符を巡り、「本当の三姉妹」を決めるべく「庭に咲いていた花の色」を確かめ合うなどの証拠探しが進む中で、登場人物たちの人間模様が交錯していきます。エキゾチックな舞台美術や、佳境で演者の周りを走る鉄道模型といった演出が、あらゆる事情に巻き込まれながらも生きる人々の姿を引き立て、遠い世界の話でありながらも現在と自然に重なり合う世界観は、人生の広がりを感じさせ、家族の形や生き方を考えさせてくれる舞台でした。

写真:2026年9月4日(金)、1回目の公演終了後の舞台の様子

ここからは、主宰の深海哲哉(以下、深海)さんに、グンジョーブタイの活動、『旅行者』の演出などについて、伺ったインタビューをお届けします。

13年間の活動を振り返って——「自分たちがやりたいこと」を探求した始まり

劇団グンジョーブタイの主宰・深海哲哉さん、広島市中区の公園前にて

藤田:
2013年から劇団を続けてこられて、最初はどのような思いでスタートされましたか。

深海:
2013年当時は、いつまでやろうとか目標もなく始めたところがありました。最初、一緒にはじめた梅田(旗揚げメンバーの梅田麻衣さん)と話して、客演として呼ばれた作品に出る以外にも「自分たちでもやれたらいいね」という理由で、箱というか器を作った感覚ですよね。最初は2人でしたが、劇団員は5、6人と増えていきました。

藤田:
最初に「こういう作品をやりたい」という具体的なイメージは決まっていましたか?

深海:
いや、最初は決まっていなかったです。なにか面白いものしたいっていうところで。でも、世の中には面白い作品がいっぱいあるので、自分たちで見つけてみたいみたいな、探求心が強かったんじゃないですかね。

藤田:
逆に「自分たちがやりたいことって何だろう」という探求から始まったのですね。続けてこられて、大変だったことは何でしょうか。

深海:
やっぱり一番大変なのは公演を打つことですね。私が考える劇団は「公演を打つための集団」なので、そこに一番力を入れますし、やっぱり大変です。でも、やっていく中で劇団員が増えてきて続けられた。一緒にやる人たちがずっといてくれることは、すごく大きいなと思います。

『旅行者』について、一番好きなシーン、演出アイデアが形になるまで

藤田:
毎回新しい演目に挑戦されていますが、今回の『旅行者』を選ばれた経緯をお聞かせください。

深海:
初期作品を今の自分たちでやり直すことも考えますが、やっぱり新しいものをしたい気持ちが強いですね。本公演の脚本は劇団内でのコンペ形式で選びます。各団員が読んだ作品の中から投票で上位3〜4冊に絞り、最終的に私が読んで決めました。

藤田:
投票制で決まったのですね。深海さんご自身が印象に残っているシーンや、好きな場面はありますか?

深海:
私が一番好きなシーンは、庭に咲いていた花の色は何色だったか、三姉妹が話すところですね。台本を読んだ時にも「ここが一番大事だな」と思いました。自分でもびっくりしたのは、稽古の度に「良い」って思ったことです。

グンジョーブダイ
公演中の様子より、三姉妹が話をしている場面 撮影:石井清一郎、提供:グンジョーブタイ

藤田:
セリフが良いという意味でしょうか。

深海:
セリフもですが、そのシーンのイメージが俳優の中にも出来ているから、俳優自身も実感を持って演じられていた感じとか。そして、それを同じように演じるのではなく、稽古の度に変わっていたことも、すごく良かったです。

藤田:
最後、お姉さんが「庭に咲いていたのはこの花だった」と花を持って話す場面もありましたね。

深海:
実は、台本には「花を持って現れる」としか書いてなくて、何色の花なのかは書いていないんですよ。「あぁ、これは私が試されているな」と思って色々考えました(笑)。

藤田:
それは考えますね! 他にもエキゾチックな世界観や、舞台上を周る模型電車の演出も印象的でしたが、どのように作られていきましたか。

深海:
舞台セットは僕の中でイメージが早めにできていたので、劇団員と相談しながら一緒に作り進めました。電車が走るイメージも早い段階からあって、劇団員に理系に強い人がいて、明かりを強くしたりスピードを上げたり調整してくれました。

グンジョーブダイ
公演中の様子より、左:三姉妹が話している場面、右:舞台上を走る模型の電車 撮影:石井清一郎、提供:グンジョーブタイ

深海:
電車が走るシーンはこだわった所で、暗転※の場面でありながら、電車自体が灯りを放つため、舞台上がうっすら明るくなります。そこで、人が出入りするのを見せないよう、電車が走る1〜2分の間に「あのセリフはこのタイミングで言おう」とか「電車がここにある時に、この人が舞台から出て行く」みたいな細かい動きやタイミングを劇場でセットが組める本番の1日前に決めました。

※舞台上の照明を消して暗くし、場面転換や役者の出入りを行う演出手法

藤田:
観客としては、電車に目が行って、自然と場面が変わっている感覚でした。

深海:
あそこはちょっと見せたいなと思ったところだったので、それは良かったです。

オーディションでの新しい出会い、「凪の演劇祭2026」に参加した印象

藤田:
今回初めて客演のオーディションを行われたそうですが、どのような意図でしたか。

深海:
これまで知っている人に声をかけていたので、新しい出会いがあればというのが主な理由でした。オーディションをしてみると、普段はミュージカルや映像を主にされている方などジャンルの違う方からの応募もあり、私たちが知らないだけで、演劇の入口を探している人は結構いると感じました。

藤田:
「凪の演劇祭2026」の印象や、広島での演劇の盛り上がりはいかがでしょうか。

深海:
演劇祭は、広島の劇団をしっかり紹介してくれていて、広島の演劇の今が俯瞰的にわかりますし、違う色の演劇をそれぞれ楽しむ機会になっています。
(公演後の)アンケートでは、一番遠い福島をはじめ県外からのお客さんが多かったです。広島で演劇がもっと活性化していって、話題の中にね、演劇があるといいじゃないですか。だから、もっと広がって欲しいなと思いますし、広がっていきつつあるのではないかという気もしますね。


グンジョーブタイ プロフィール
2013年に深海哲哉を中心に設立された広島の劇団。「日常と、非日常の曖昧さ」をコンセプトに活動を続ける。県内外での公演はもちろん、映像作品への出演、地域の文化施設と観光を組み合わせた新しい演劇の取り組みなども行う。
これからの活動
・第29回まつもと演劇祭 「星の王子様」
日程:2026年10月9日(金)〜11日(日)
会場:長野県松本市
https://matsumotoengekisai.wixsite.com/website/blank-3

深海哲哉 プロフィール
1976年広島県生まれ、県内在住。2013年に劇団「グンジョーブタイ」を旗揚げし、主宰・演出家・プロデューサー・俳優として精力的に活動を展開。2019年には東京の劇団「アマヤドリ」にも所属。これまでに映画『ドライブ・マイ・カー』や『孤狼の血』シリーズ、ドラマ『孤独のグルメ』などにも多数出演。アクターズスクール広島等での後進育成にも長年携わっている。若手演出家コンクール2024優秀賞を受賞。


取材・文 藤田えりか
広島県在住、広島市立大学芸術学研究科博士前期課程修了。2023年よりアートギャラリーミヤウチに学芸員として所属し、児童を対象にした企画展などを担当。最近はアーカイブとアーカイブされた情報の活用に関心を持ちながら活動中。